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第6回 彦坂 優 : トピカ・ロードランナーズ/アメリカ(2015年5月29日)

プロフィール

氏名:彦坂優(Yu Hikosaka)

生年月日:1995年3月26日(20才)

出身:東京都

ポジション:FW

所属学校・チーム:Topeka Road Runners(NAHL)

経歴:HCC→ EC Salzburg U18

→ Topeka Capitals (NA3HL)

→ Topeka Road Runners (NAHL)

代表歴:U18 日本代表、U20日本代表

 

多くのホッケー選手のシーズンが既に終了している5月、彦坂優選手はアメリカのジュニアリーグのプレーオフで奮闘していた。彼が所属するNAHL(ノースアメリカン・ホッケーリーグ=アメリカジュニアリーグの2部に相当)のトピカ・ロードランナーズは、リーグ24チーム中4位タイの成績で60試合のレギュラーシーズンを終え、プレーオフに進出。しかし、準々決勝シリーズで惜しくも敗退となり、長いシーズンは幕を閉じた。彦坂選手は今季NAHLでプレーした唯一の日本人として、レギュラーシーズン47試合に出場し17ポイントを挙げ、プレーオフでは8試合で3ポイントの成績を残した。

 

東京都出身の彦坂選手は、より良い環境でホッケーができるようにという父親の配慮のもと、小学生の時に家族で北海道へ引っ越した。しかし、周りの選手よりもホッケーが上手く、物足りなさを感じていた時にHCCというモントリオールのホッケーアカデミーが主催したキャンプに参加。これがきっかけとなり、本場カナダへのホッケー留学を決意した。「ホッケーでは絶対に誰にも負けないという強い気持ちを常に全面に出していた。礼儀を知らない、本当に生意気な性格だったことから、同じHCCの日本人留学生(多くが年上の先輩)ともウマが合わず、その結果、北米のチームメートとしか会話をしなかった。そのおかげで英語の上達は早かった」と当時を振り返る。

 

HCC在学4年目の時に、カナダのメジャージュニアの監督の目にとまり、その紹介でオーストリア・ザルツブルグのチームに移籍することになった。3年間プレーした後、トップチームとプロ契約を約束されるも、外国人枠を争うカナダ人にポジションを取られ、解雇通告を受けた。新たな進路を探すため、自らハイライトビデオを作成し、アメリカのジュニアリーグであるUSHL(1部)、NAHL(2部)のチームに片っ端からメールを送り、アピールを続けた。そんな中、NAHLの下部であるNA3HL(3部)の新設チーム、トピカ・キャピタルズに唯一興味を持ってもらい、移籍が決まった。そして、シーズン序盤の21試合で45ポイントという結果を残し、その活躍がNAHLチームの興味を惹きつけた。復数のチームからオファーがあった中、それまでのチームと同じ街を本拠地とするトピカ・ロードランナーズへの移籍が決まり、シーズンの残りを過ごした。

 

今季はシーズン開始直前に、最大の理解者であり、いつも応援してくれていた父が他界した。しばらく気持ちの整理が付かず、ホッケーに対するモチベーションさえも上がらない日々が続いた。「今季は本当にタフで、自分の望んでいるようなシーズンではなかった。自分のホッケー人生は父の存在があってこそ」。精神的に不安定な状況の中、父への想いを胸になんとかシーズンを戦い抜いた。

 

チームに求められている役割はゲームメーク。パワープレーや得点が必要な大事な場面で起用されるなど、監督からの信頼は厚い。今季は数字的にも満足がいくものではなかったが、「スピードとパックコントロールは絶対に負けない。ここ数年でまたレベルアップしているのを感じる」と手応えもあった。今後の課題としては、「パックを持った際に、いかに落ち着いてプレーし、良い判断ができるか」という点を挙げた。

 

NAHLはアメリカの大学やプロリーグにも選手を輩出している有数のジュニアリーグであり、トピカの試合には平均2000人のファンが訪れる。アウェイでは4500人ものファンがアリーナを埋め尽くすチームもあるほどだ。毎試合、大勢の観客の前でプレーする興奮や楽しみを感じると同時に、この世界で生き残る大変さも多々痛感するという。「もともと、アメリカにはコネが全く無い状態で来たため、自らの実力でのし上がるしかなかった。外国人枠を使う選手は助っ人としてチームに大きく貢献する選手でなければならない。弱肉強食の勝負の世界なので、コーチに好かれていても安心はできない」と語る。

 

来季はロードランナーズから再契約のオファーをもらっている。ジュニアリーグでプレーできる最終年。チームの年長の1人としてリーダーシップも期待されており、責任も大きい。将来はNCAAのD1(全米大学体育協会の1部)でプレーすることを目標にしており、それを実現するためにも、しっかりと結果を残さなければいけないと感じている。

 

海外アイスホッケー留学を考える選手へのメッセージを聞くと「 海外でプレーすることは大変だけど、夢が本物だったら他のどんなものも犠牲にできるし、実現するためにどんな苦労に対しても頑張れる。脱落するのは努力や情熱が足りなかったということ。日本の若い選手も夢を信じて最初の一歩を踏み出して欲しい」と語った。若くして日本を飛び出し、カナダ、ヨーロッパ、アメリカと、自らの実力と努力で世界を渡り歩いてきた彦坂選手の言葉には重みがある。その情熱を持って今後どのような道を切り開いていくのか、目が離せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文:三原卓也(リードオフ・スポーツ・マーケティング)

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